重複表現に気をつける

重複表現とは重複した表現のことです、って当たり前か。
簡単な例をひとつ紹介しましょう。

「頭痛が痛い」

 昔、僕の先輩が本当に言っていました。みなさんは賢明な読者ですから説明不要だとは思いますが、一応、念のため。
「頭痛」という言葉は、見てのとおり「頭」が「痛い」という意味です。だから「頭痛が痛い」は「痛い」の重複表現になるのです。
「なんだ、そんな間違い起こすわけないじゃん」
 そう思いますか? では問題、以下の文章のうち、どれが重複表現でしょうか。

・後で後悔しても遅いぞ!
・今度家族で旅行に行こうと思う。
・一番最高の幸せは二度寝する瞬間である。
・思いっきりダッシュして追いかけたけど捕まえられなかった。
・古来よりこの神社は神聖な場所として崇拝されてきた。

 さぁどうでしょう。実は全部重複表現です。
 後悔は「後で悔やむこと」ですから「後で後悔」は間違いです。
 旅行は「旅に行くこと」ですから、「旅行しようと思う」が正解。
 最高は「最も高い」ですから、一番という意味です。だから「一番」か「最高」のどちらかを消さなくてはいけません。
 ダッシュも「思いっきり走ること」ですから、思いっきりは不要です。
 で、問題はこの「古来より」。この表現が重複表現だと知らない人が、実はプロでもたくさんいるのです。実際テレビCMで「古来より〜」というナレーションが流れていたこともありました。
 「あの日以来」というと「あの日から」を表します。「来」には「から」という意味が含まれているのです。つまり「古来」はそれだけで「古くから」という意味を持っています。「から」とか「より」を入れてしまうと重複表現になるのです。だから正解は

・古来、この神社は神聖な場所として崇拝されてきた。
・古くから、この神社は神聖な場所として崇拝されてきた。
・古(いにしえ)より、この神社は神聖な場所として崇拝されてきた。
 となります。